停滞する米Fintech型銀行制度議論

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

今週水曜、米通貨監督庁のノレイカ長官代行は、Fintech企業からの免許申請に対して「十分な準備がなされていない」という発言をしたと報道されています。


ニューヨークで行われたFinovateで行われた発言を意訳すると「我々(OCC)はまだ(Fintech型の)免許の申請を受け付ける準備ができておらず、事業の理解をその前にするべきタイミングと捉えている」と発言する一方で、Varo Moneyなどの事例のように、旧来型の銀行免許の申請はFintech企業からも受け付けているとも、記事では述べられています。

先週本ブログで取り上げたSquareの事例はユタ州の産業用ローンライセンスであり、SoFiと並んだ事例です。一方で、Varoの事例は連邦レベルでの申請という、免許のレイヤーの異なりがあります。OCCが従来議論として提示してきたFintech型銀行に向けた規制提言は、州法レベルでの規制当局との訴訟にも発展している中で、現状、トランプ政権による金融制度改革の中では議論が停滞することも想定通りのシナリオといえるのかもしれません。

なお、別の動きとしてはFintech推進を担う政府当局でもあるCFPBが、9月14日付でカリフォルニア州のオンラインレンダーUpstartに対してノーアクションレターを発出している点が注目されます。これは、同社が従来型の信用情報に加えて、教育や雇用履歴を用いた信用判断をすることに対して、信用機会平等法には抵触しないとする判断を示したものとなります。Upstart社は先日も取り上げたIncome share agreementsのような先進的な(過激な?)サービスを出してきたプレーヤーですが、このような新たな信用創造に対して正式な支援を得た形となります。

当面の観測としては、連邦レベルでの制度整備はあまり進展することが望めない一方で、州政府や、ノンバンクのレイヤーにおいては着実な進展がみられていくのが、現実的な目線なのかもしれません。

今週の読んでおくべきニュース

中国におけるICO凍結に関するTC寄稿記事
人民銀行による動きはほぼ米国の連邦政府と同様の判断だが、一部のシリコンバレーの投資コミュニティにとっての恩恵と捉える向きも。だが、改革開放路線以降の中国の政策が、激しいスピード感で株式市場を拡大してきた経緯を知る人たちの視点からは、実に正統派なやり方という解釈をしています。また、これまでのP2Pレンディング市場に見られてきた活況と規制の経緯を見ても、現状の対応の温度は違和感がなく、P2P融資では遅かった対応が、むしろ今回は適切な速さで展開された、とも述べています。

JPモルガン ダイモンCEO「ビットコインは詐欺」
「詐欺」「チューリップバブルより悪い」「一瞬でクビにする。なぜなら規則に反し、バカだからだ」
この舌鋒鋭い感じはほぼ先日のロバート・シラー(根拠なき熱狂や投機的バブルのもっともよい例はビットコインだ、と発言)にも似ていますね

マレーシア証券委員会が香港、ドバイ、シンガポール当局と協力体制構築
今年のオーストラリアの証券当局との連携に続き動き。日本では証券関連における当局の動きは中々見られていない気がします

ゴールドマンがMarcusの強化のためにオンラインレンダーを買収
Bond Streetを買収。これまで3億ドルのLOCをジェフリーズから調達

Neyberがゴールドマンから1億ドルを調達
先日ご紹介した英国の信用組合2.0の勢いがすごいです。調達額には負債も含まれる

Plaidがオフィス移転
以前の2倍の規模とのこと

SoFiのCEOが退任
社内における人事関連の訴訟とネガティブな報道が影響、とブログで表明。ビジネススクールの先輩

少し前の必読レポート

WEFによるFintechの先の世界レポート

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。