中国P2Pローン市場に見られる変調

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今週のFinancial TimesのTechBlogでは、中国のP2Pローン市場にみられる変調を取り上げています。

中国のP2Pローン市場は直近では10兆円近い残高にまで拡大しており、1年半前から6倍近い成長を遂げました。

当初、中国の当局は容認的な姿勢を示していたものの、度が過ぎた取り立て行為や借り手側の不法な振る舞い、さらには実体のないローンプラットフォームが1兆円近い資金を詐取するといった事件の発生を受けて、今は取り締まりに向かって一挙に動いています。

本年4月には、「金融」という名称の入った企業の登記が軒並み断られるといった形での行政の対応が行われており、中国人民銀行もP2Pローンやクラウドファンディング等の市場での規制回避や不法行為がないかを今後精査していく動きが見られています。

そのような中でも、強く懸念されているのが、P2Pローンのプレーヤーの中でも元本保証的な表明を行っているケースになります。

中国の最高裁や金融当局は、P2Pローンには元本保証の性質はない旨を発言しています。しかし一方で、大手どころのローンプラットフォームでは、「保証」という表現が数多く見られており、中国において昔から国有企業が実質的な元本保証の付された債券を発行してきた中で、同様の性質があるような印象を投資家に与えてきた可能性が取りざたされています。

また、この点に加えて、不動産価格の高騰に対する対策として取られた、住宅購入には30%の頭金を要求する規制を、P2Pローン業者が迂回させている点も問題視されています。政策目標に対する阻害要因とすらなりつつあるP2Pローンは、このような観点でも今後冷え込んでいく可能性が高いものと見られています。

中国のこのセクターは、本年の世界中における大型Fintech資金調達案件の上位を占めてきた点でも注目されてきました。中国における消費者信用や銀行の融資側における人口カバレッジにおいても、いわゆるシャドーバンクとして金融仲介に占める意味合いも高かったものと考えられますが、そのネガティブサイドがだんだんと着目されてきた形といえます。形は異なるものの、Fintechがメインストリームの政策を左右し始める中で、当局が規制に動いた形は米国と同様といえるのかもしれません。

今週の読んでおくべきニュース

USとイタリアの金融がFintechに一番弱いというUBS調査

(ニュースではないですが)H28情報通信白書

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