米国のFintech型銀行案を巡る訴訟

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当ブログでも度々取り上げている、米国でFintech型銀行を創設する制度案(記事1記事2)ですが、今週、州政府の金融監督局の団体である州法銀行監督官協会(Conference of State Bank Supervisors)がOCC(連邦通貨監督庁)と訴訟を行うに至りました。

同訴訟ではこれまでも取り上げられてきた反対論がオフィシャルに表明された形になります。州レベルでの銀行監督当局が、OCCとカリー長官に向けた訴訟を提起しており、OCCはFintechの定義を公式には行っていない一方で、ノンバンクに対する制度をテクノロジードリブンであるかを問わず制定する意向があると表明していることを取り上げています。

州政府はこれまで、銀行に限らず様々なノンバンクサービスの監督を行ってきました。そこには、送金業や住宅ローン専業会社、債権回収業者などが含まれてきました。一方で、OCCは本来、銀行業であるか、議会の定める事業のいずれかに対する規制当局と位置づけられるため、原告はこれを行政機関としての権限を越えた動きであると主張しています。また、この一連の制定に向けた動きが、適切な告知・意見収集のための期間なしに進められていることも問題であるとしています。

Fintech型の銀行は、英国であればチャレンジャーバンクという業態として、米国では州ごとの制度をストレッチして運用するCross River Bankなどが事例として挙げられます。今回の訴訟で、地域性を問わないインターネットのあり方、システミックリスクを包含する金融システムの折衷点で、すぐに新たな制度のあり方の合意形成をすることが(米国であっても)簡単ではないことが如実に現れた形となります。もっとも、これらの提言が提起される背景には既に多くのネオバンクがユーザーの支持を得て活躍している点がある一方で、そのような状況は日本ではそもそもまだ発生していないことにも留意すべきといえます。

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