米Fintech型銀行案への反対論

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ニューヨーク州金融当局のトップは今週、以前も取り上げたOCCによるFintech型銀行創設案に対して、多重規制を根拠とする反対論を表明しています。

同当局トップのVullo氏は、産業界・政府当局者の集まるランチョンにおいて、OCCが提唱するFintech型銀行の制度創設に対して、既に州ごとの規制が十分に機能している銀行制度において、全く新たな制度を作ることへの反対意見を表明しました。この表明は、同当局がその前日に行ったパブリックコメントに合わせた内容となっており、提案されている規制緩和の要因が、州レベルでの規制の効果を減じ、新たなリスクを生むものとしています。これまでも州政府がFintechを監督するための努力を行ってきた中、また消費者保護をすぐに行えるポジションを担ってきた中で、州ごとの自治を否定することの是非を問うています。

消費者保護(手数料や貸付金利の水準)の行い方は、連邦よりも自治体レベルでも行った方が良いケースは多いものとなります。一例ですが、ニューヨーク州においては高利の条件を課すペイデイローンは違法な扱いとなっている中、これまでもインターネット経由でこの規制を回避しようとしたプレーヤーはみられてきました。そのような中、規制アービトラージが行われる余地については、今後の議論の中でより精緻な議論が求められていくものでしょう。しかし一方で、パブリックコメントの中では「大きなプレーヤーを生むことは不正の余地を大きくする」、「連邦レベルに向けた金融規制の緩和はサブプライム危機を招いた」といった指摘は、些か過剰な主張が含まれている印象もあります。

上記の州当局レベル以外では、銀行業界からの反論も生まれています。米国銀行協会の担当者は「Fintech型銀行が犯す失敗は、銀行業界全体に波及する」と述べている他、金融サービスラウンドテーブルも「預金保険対象ではないプレーヤーは銀行を名乗るべきではなく」「既存の国法銀行や貯蓄金融機関の流動性維持・資本規制面での要請と平仄を合わせるべき」と述べています。

ドット・フランク法の見直しを掲げる中、以前も取り上げたように米国のFintech企業は、いままでのシャドーバンクとしてのプレースタイルを見直すべきタイミングに来ています。収益に困ったベンチャーが消費者保護をおろそかにするといった批判が生まれないよう、今後の対応が望まれていくものとなります。

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