香港の金融行政におけるSandbox構想

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香港金融管理局は今週6日、同国における規制監督のSandbox構想について、同局総裁が声明を出しています。

同局のトップを務めるNorman Chan総裁は6日、「金融業における香港ブランドとは」と題したスピーチにおいてこの表明をしています。そしてその中で

1.中国の一帯一路構想や人民元国際化がもたらしている環境変化
2.デジタル及びインターネットによる金融サービスの革新
3.周辺の金融センターとの競争

を意識し、これまでの金融センターとしての質をさらに高めべき要素の一つとしてFintechへの取り組みを2つ挙げています。

そのうちの一つは、同国が2000年に設立した研究機関ASTRIと共に、イノベーション・ハブを立ち上げる構想です。こちらは、銀行や決済業のプレーヤーに向けて、例えば複数の金融機関の間でも技術実証の実験が行える環境を準備しています。この取り組みは、個別のプレーヤーが独自の環境を用意するだけではたどり着けない、ビッグデータやRegTech領域を含む、産業を挙げたイノベーションの創出を可能としています。

そして、もう一つが金融監督体制における柔軟性の取り入れです。Chan総裁は香港におけるFintechの進展が他国に比べて遅れているという見方には与しないとしながらも、銀行等から要望として挙がっている、声紋認証や指紋認証技術、ブロックチェーン、AR、ロボティクス技術などをより使えるようにする価値を評価しています。

その上で、同国のFintechの取り組みとしては第二弾となる監督Sandbox(Fintech Supervisory Sandbox)構想を公表しています。これはFintech企業ではなく、銀行を対象に新たなアイデアの実験を促すことを目的としています。そしてその緩和事例として、電子的取引におけるセキュリティ関連の内容や、新たな技術活用の承認期間の短縮が挙げています。

香港はこれまでの様々な関係者とのヒアリングの中では、Fintechのセンターとしては「起業家は多いものの、エコシステムがない」という評価の多い場所でした。ただ、元々非常に強い金融資本市場プレーヤーの集積と、中国本土としてのゲートウェイの力がある中で、今後はこの取り組みを通じて、まずは銀行産業の高度化に向けた一手を打った形となります。

なお、時を同じくしてインドネシアにおいても同様の動きが生まれています。インドネシアの金融サービス庁及び中央銀行は、年内にはFintech企業(クラウドファンディングやP2Pレンダーを想定)が同国で安定してサービス運営できるための制度整備を行うことを表明してきました。9月2日には同中銀が記者向けに示したスライドの中で、Sandbox型アプローチを取ることが有効との意見を伝えています。このように様々な国において、Sandboxが意味することはやや違いがみられるものの、行政の柔軟化を明確なメッセージとして発せられています。

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