6月6日、シンガポールの通貨監督庁(MAS)はRegulatory Sandboxのガイドラインに関するコンサルテーションペーパーを公表しています。
同ペーパーでは、これまでも金融機関が革新的な取り組みを行うことは可能ではあったものの、法的・制度的な位置づけがあいまいなケースでは、実験を行わない意思決定がされてきた点に問題意識を置いています。スマートネーション構想の一部に金融産業が位置づけられている中、将来的な競争力低下を危惧し、Sandboxの取り組みに至っていることが述べられています。
その上で、例えば100名のアーリーアダプターに向けて、半年間など期間を区切った上で実験的なサービス提供を行い、MASがその結果に対して十分な見解を得た際には新たな制度として広範な展開が認められる、という仕組みを用意しようとしています。コンサルテーションペーパーは、7月8日まで意見公募が行われています。
シンガポールのMASは、世界のさまざまな金融当局の中でも、スマートレギュレーションに向けて積極的なアプローチを取る主体として知られてきました。そして、Sandboxに関する考え方の公表も秒読みと見られてきました。Sandboxに関する意見表明としては、昨年11月の英国FCAの事例、先日のアブダビにおけるSandboxの議論に次ぐ形といえます。
また今回、やや異色ともいえるのは、政策の打ち出し方に際してインフォグラフィックが用意されていることです。
そのインフォグラフィックで述べられているSandboxの対象となる要件は、一読の価値ある構成となっており、Sandbox政策の基礎的な骨子ともいえるものです。
1)技術的な新規性があること
2)消費者・産業へのメリットや問題解決力を発揮すること
3)プロジェクトを一般的な規模へと広げていく意思があること
4)テストシナリオや結果が明確に定義されていること
5)障壁となっている問題が明確に定義されていること
6)予見される主要なリスクが分析・対応されていること
7)プロジェクトが中止となった場合の出口シナリオが決められていること
Regulatory Sandboxは様々な形での解釈があり得ますが、イノベーティブなプレーヤーに向けたメッセージ性も含められた印象があります。
政策の表現方法という意味でも、一つの参考となっていくのかもしれません。
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