ヒト・アドバイザーを助けるロボ・アドバイザー|Fintech(フィンテック)研究所

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2016年に活発化が予想される領域として、ロボ・アドバイザーがあります。

お金のデザイン社やWealthNaviのほか、既存のオンライン金融機関でもマネックス・セゾン・バンガード投資顧問エイト証券といったプレーヤーも台頭しており、他にもさまざまなベンチャーが生まれてくることが予想されます。

FutureAdvisorとBBVAの提携

以前に当ブログでも、取り上げたFutureAdvisorは今週、Fintechへの取り組みでは世界でもっとも積極的ともいえるスペインの銀行BBVAとの提携を開始したことを発表しました。

この取組により、BBVAの米国の顧客はFutureAdvisorのロボ・アドバイザリーサービスを享受することが可能となります。同サービスの裏側には、親会社で世界最大の運用会社BlackRockのインフラがあり、BettermentWealthfrontを置いて選ばれた背景としてもベンチャーにはない継続性もあったとの報道があります。

FutureAdvisorのサービス構成は機械的なアドバイスは無料、対人的なアドバイスは50bpsで、という構成になっています。「ロボ・アドバイザーの終焉?」でも見たように、価格競争や差別化の厳しさから、この領域では様々なチャネル競争が今やカギとなってきています。

人からのアドバイスの立ち位置

運用産業のリサーチで有名なCerulli Associatesのアナリストはそのような中、上記記事で「ほとんどのロボ・アドバイザーが、実際にはロボではなく、電話での問い合わせやチャットでの助言が可能」になっていると述べています。そのトレンドの中で、いくつかのロボ・アドバイザーは、元々のビジネスモデルを転換して、対人的なFPを支援するテクノロジー提供者となることを選んでいます。

機械的なアドバイスと人間的なアドバイスではすみ分けが発生しており、顧客それぞれの金融状態がより複雑になる中で、ヒト・アドバイザーのもたらす役割は、むしろよりありがたくなる、という側面もあるようです。

資産運用や市況に対するアドバイスの源泉としての自動化や人工知能は、既に様々な側面で実用化されていますが、生き方や転職、家族関係といった側面に、人工知能が助言をもたらすのは、もう少し先の未来なのかもしれません。

Totum Wealthが掲げる人的資本分析

このような未来像を見る中で、現実的な解を模索するベンチャーの一つが、Totum Wealthです。

同ベンチャーは、伝統的な資産運用戦略の判断要素に加えて、居住地域、健康状態、家族形態、働いている産業、将来所得が増えるかの見通し、不動産保有といった、人的な側面を取り入れた、自動的アドバイスを提供することを目的としています。

元々PIMCOなどに所属していた創業者たちは、世界の最大手の機関投資家たちが、自らのリスクプロファイルを精緻に理解した上で、運用を行っていた一方で、個人にはこのようなオプションは割高すぎることに着目しました。一節には、BlackRockのアラジンには数億円のコストがかかるもの、とされます。このような世界に対してTotum Wealthでは月額128ドル~のサービスとして、米国の独立系FP(RIA)を中心として、エンドユーザーに、人的資本に関する自動アドバイスツールを提供していく見込みです。

人的資本は個人の資産運用を厳密に考える際の重要な要素です。

一例を挙げると、株式200万円、預金300万円を持っている32歳で年収が500万円の人が2人いても、既婚/未婚か、大企業/ベンチャーにいるか、転職歴がどれくらいあるか、キャリア志向はあるか、といった要素により、その人が暗に有している「将来の貯金」の金額や、そのリスク度合いは異なります。

このような人的資本を加味したポートフォリオの投資をするべき、という理論上の展開が90年代頃から見られていますが、なかなか決定打がなかったことも事実。ストーリーとしては明解ですが、正確には難解な内容であることも手伝っており、RIAであっても正確な助言をすることが難しかったから、ということができるのかもしれません。

創業者が筆者の同級生でもあるTotum Wealthはこの問題に挑むまた一つのベンチャー、という形になります。うまく技術が適用されれば、ロボ・アドバイザーがヒト・アドバイザーをうまく保管しつつ、新たな資産コンサルティングの時代を作ることが可能となります。

技術の普及ペースが早い米国の金融産業において成長を遂げるものか、大いに注目したいと思います。

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