Fidor銀行の買収

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ドイツの先駆的銀行の代表格として知られていたFidor銀行は28日、フランスのBPCEグループによる買収に合意したことを明らかにしています。

Fidor銀行は2009年に設立されたドイツの銀行です。金融危機の直後に設立された同行は、ユーザー本位の銀行を志向し地道な拡大を遂げてきました。

2015年9月には英国での事業も立ち上げ、これまで12万口座を獲得する勢いを見せてきました。預金残高は約300億円、黒字化も達成している、ビジネスモデル上も無理のない財務体質を持っています。全ての金融取引が60秒以内に完了することが可能であり、とにかく便利で、顧客期待に応える、ということがアピールされてきました。

同行の最大の特長といえるのは「インターネット化した銀行」の取り得る選択肢をどれもスピード感ある形で展開していることです。自社のAPIを提供することで、ツイッターなどを利用した送金サービスや、ソーシャルレンディング、クラウドファンディングといったサービスがエコシステムとして提供されています。また、暗号通貨を用いた送金システムの活用にも意欲的であり、Rippleを用いた低コストの国際送金サービスも実現しています。

マーケティングでは、ソーシャルメディアの活用の仕方において、それをPRや販売のチャネルとするのではなく、サービスのフィードバックを受ける窓口として活用しています。営業時間外でもコミュニケーションを取り、ユーザーの意見表明を受け付け、Facebook上の「いいね!」が2000回得られると貸出金利が0.1%下がるようなキャンペーンを行うなどといった、意欲的な取り組みも行っています。

加えて、ユーザーが相互にサポートをしたり、サービス改善にむけた提案を行うコミュニティを形成しており、コミュニティに貢献したメンバーにはチップを支払ったりボーナスが付与されるCommunity Karmaと呼ばれる制度もつくっています。同社は「参加型バンキング」というテーマを標榜しており、アドバイスがより身近に提供され、真にユーザー本位の世界が作れるような世界観を目指しています。

一方、買収を行う側のBPCEグループは、フランスの地場大手銀行であり、Banque Populaireとケス・デパーニュが合併したプレーヤーとなります。フランクにみて、これまでさほどFintech的な位置づけでは見られてこなかったプレーヤーではあるものの、同行会長のコメントによれば、モバイル化も含めたデジタル戦略の重要な一歩として本ディールは捉えられているとのこと。非常にローカルな、しかも隣国のプレーヤーと統合した形となりますが、そのようなプレーヤーが大きな意思決定をし、デジタルを取り込んでいる点にこそ、このニュースの重要性があるといえます。

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