ネット証券はもう古い?アプリ証券の時代へ

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今週、米国で今話題の証券取引アプリRobinHood50百万ドルの資金調達を行ったことを発表しました。

同サービスは、累計で66百万ドル(約80億円)もの調達を行った形となります。

RobinHoodは同名の証券会社が運営する株式・投資信託の取引アプリで、同社は現状iPhoneアプリ一本のみで勝負している30名のエンジニア/デザイナー集団です。

筆者も同アプリを米国在住者に触らせて頂いたことがありますが、取引や価格参照のヌルサク感が段違いであり、初めてネット証券に触れた時の楽しさを思い出したような気がしました。

とはいえRobinhood、普通の証券会社のアプリのようにも見えますが、その特長は何より株式取引が無料で行える点です。

社名にも表れているように、同社は資産をそれほど保有していない層にも利益や富がちゃんと行き渡ることを目指しています。その上で、既存のネット証券(同社はe*TradeとScottrade、チャールズシュワブを挙げています)では店舗や大規模システムを維持するために、割高な手数料を取っていることを強調しています。

既存のネット証券は、15年ほど前には伝統的な証券会社(メリルリンチやスミスバーニー等)に対し、ブリック&モルタル(レンガと漆喰の対人店舗)という形容詞を付けて差別化し、安い手数料と当時のITバブルというトレンドの中、大きなシェアを獲得しました。

しかし、純粋なディスカウント・ブローカーとしては収益が得られなくなったことから、顧客獲得のために実際の店舗も展開するようになり、「ク」リック&モルタル(いわゆるO2O型)と呼ばれる業態に進化してきた歴史があります。

このような環境の中、Robinhoodの台頭や先日ご紹介したAcornsのようなプレーヤーは、「そもそもオフラインにかかる費用はムダであり、もっと取引ニーズに特化するべき」と捉える原点回帰といえるのかもしれません。Robinhoodではこれまで累計で5億ドルの株式取引が行われ、ユーザーは合計で12百万ドル(約14億円)の取引手数料を節約した旨を述べています。

このような動きが可能となった背景としては、従来のブラウザ中心のネット証券が販路を宣伝・広告に求めざるを得なかったのに対し、アプリの世界ではユーザビリティさえ優れていれば、販促料がかからないことが挙げられます。そのような意味では、ネット証券に対して、アプリ証券といえるパラダイムが台頭してきており、コスト競争力上は圧倒的な立ち位置にいる、といえるのかもしれません。

同社は今後、その収益源を待機資金からの利息収入と、信用取引における貸付金利・貸株料、一部のコアトレーダー向けのプレミアム機能、同社の顧客ベースを活用したAPIなどが対象としていく模様です。

現物取引での低価格路線と、利息収益等を目指す姿は、日本では松井証券にも似たモデルともいえるかもしれませんが、従来以上にUXに特化した設計を行っている点や、オーストラリアを始めとする海外展開も見越す中、このビジネスは大変注目されるべきものといえます。

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