昨日、P2Pレンディングの分野で最大規模を誇るLending Clubがついに上場しました。
上場時の時価総額は54億ドル(約6,400億円)と、日本の大手地方銀行と同程度の評価がついた形となります。
融資実績は7,400億円
Lending Clubは、融資を受けたい企業・個人と、投資家の間をつなぐマーケットプレイスを提供しています。
そのスキームも比較的わかりやすく、借り手と投資家を、専用銀行を挟んで無担保ローンを行う形となっています。
同社では、信用調査のスコアを用いながら、借り手の格付けを行い、貸付を行う利子率を提示しています。
そして、メンバーとなる投資家が、直接借り手に融資を行い、Lending Clubは1%のサービスチャージを受け取る、というビジネスモデルになっています。
これまでの融資実績は62億ドル(約7,400億円)。支払われた利子額も約6億ドル(約700億円)と、盤石な実績を築いた背景には何があったのか。
その発展した理由の一つには、P2P融資で通常想起される個人の投資家だけではなく、年金基金やヘッジファンドといった機関投資家の買い手を集めたことが挙げられます。
Lending Clubの典型的な融資では、11-12%の利子がつくこともあり、この利回りを好感した機関投資家は、2012年頃を境にP2P市場になだれ込みました。
その勢いはあまりに大きく、歯科医や主婦といった、従来P2Pレンディングを支えてきた投資家層が、魅力的な投資先を失った(さらには、機関投資家が)、とする批判を受けるほどに至っています。
直接金融2.0
P2Pレンディングは、次の景気後退サイクルに耐えられるか、といったテストはあるものの、これまで金融産業が必ずしも真剣に取り上げてこなかった無担保ローンの領域について、新たな市場を拡大している存在です。
とりわけ、インターネットのサイトを足がかりとして、無数の投資家を集める仕組み(クラウドファンディング)を作り上げ、大胆に「中抜き」を行った点は破壊的なイノベーションといえるのかもしれません。
技術自体は、インターネットの黎明期のものと変わらないものの、クレジットスコア等のデータにもとづいた信用力の計算が、従来銀行の存在意義であった審査能力を上回ったことや、インターネットに融資を求める発想が浸透したこと、この動きを伝統的な機関投資家が信頼していることが、この動きを更に後押ししているといえます。
出資の世界でもKickstarter等のクラウドファンディングを行うプレーヤーが勃興している中、従来、証券会社や銀行を挟んでいた伝統的な「直接金融」から、マッチングサイトやオークション会社だけが介在するこの流れは、直接金融2.0といえるのかもしれません。