大型調達が続く運用系Fintech

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今週、米国で運用助言を行うWealthfrontが64百万ドル(約70億円)の資金調達を発表しました。

Wealthfrontは元々、KaChingというベンチャーとしてスタートした投資助言会社です。そのファウンダーはAndy Rachleffというシリコンバレー有数のベンチャーキャピタリストでした。

同社はKa-Ching時代、「成績の良い個人投資家のポートフォリオを皆でフォローして、運用報酬を相互に支払う」という、現在FXで提供されているミラートレードのビジネスとして起業された会社です(当時のエンジェルは神レベル!)

しかし、さほどスケールしなかったミラートレードには早めに区切りをつけ、米国全土でこの15年間拡大している、個人の資産の一任運用の領域にアプローチしていきました。

そのプレースタイルは徹底して「インデックス自動運用で安く」。現在、同社にお金を預けると、最初の1万ドルは運用報酬ゼロ、それ以後も0.25%という脅威の安さで、運用が提供されています。

このスタイルが、特にシリコンバレーで自社の売却やストックオプションでお金を得た、若手の富裕層の支持を集め、開始後2年半で10億ドル(約1,100億円)を越えるなど、急速な成長を遂げています。

過程で、最高投資責任者としてバートン・マルキール(ウォール街のランダム・ウォーカーという名著あり)を擁するなど、名実ともに実績を積み重ね、一大資産運用会社となっています。

今回、64百万ドルを調達したことで、累計での資本金は1.3億ドル(約140億円)となり、今後とも、ゲームチェンジャーとなるような要素が満載といえます。

また、詳細は別稿に譲りますが、一部、人を介したインデックス運用助言を提供するPersonal Capitalも今週、50百万ドル(累計1.04億ドル)を調達しています。

このようなお金が集まりやすい背景としては、元々個人金融資産が67兆ドル(約7,400兆円)ある米国における資産運用のニーズの高さと共に、中立性とコスト効率性を重視する運用会社選択があるように感じられます。

米国では、2000年頃の証券営業における中立性問題や、2008年の金融危機を経て、特定の証券会社や商品サプライヤーに依存しない、中立性を重んずる資産運用の傾向が色濃くニーズとして蓄積されてきました。

また、一定の手数料を払ってでも高いリターンを期待するアクティブ運用についても、長らく懐疑的な目線が投げかけられてきた中、インデックスファンドやETFを用いたとにかく安いアドバイスを求める人口が根強くいます。

このような、豊富なユーザーベースのある米国市場だからこそ、このような巨額の調達と急速な拡大は成し得たのかもしれません。しかし、中立性とコストの安い運用は万国共通のニーズでもあり、今後ともFinTech領域の中では、実需に基づく成長領域であると考えられます。

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