芸術品の値段は中国の富裕層が決める?

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絵画や彫刻への投資。

こう書くと、投資というよりは、やはり趣味に聞こえてしまいますが、アートへの投資は、近年盛り上がりを見せています。

J.P.モルガンによる調査によると、アート市場の規模は、560億ドル(約5.5兆円)とされています。

取引が行われている地域の分布を見ると、2012年中は33%が米国、25%が中国、23%が英国、という構成となっています。クリスティーズやサザビーズなどのアート・オークション業者発祥の地である英国の市場規模を、中国が上回っているのには驚かされます。

芸術品の買い手は、富裕層であることは想像に難くないですが、上述の調査によれば、アートの価値は、とりわけ新興国での富裕層が増えてくるに従って、価格も上昇するものと述べられています。

アート投資の累積リターンを計算するMei Moses World All Art指数を見ると、1980年代にリターンが大きく上昇した後、1990年代はリターンが低迷しました。その理由としては、当時の富裕層の輩出地であった、日本の投資家がバブル崩壊後に買い手とならなくなったことが挙げられています。日本の「失われた10年」は、アートの世界でも同じような影響を与えていたのですね。

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出所:J.P.モルガン ウェブサイト”The Art of Investing in Art (Kyle Sommer著)

その後、新興国経済が成長する中で、2000年台にはリターンは増加、現在は上記の指数は2000年の3倍近い価格帯で推移しています。近年は、冒頭にも触れた中国等の買い手が増えてきたことから、市場全体としても価格が上昇していると考えることができそうです。

アートの値段は、その種類によっても異なるようです。
 

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出所:J.P.モルガン ウェブサイト”The Art of Investing in Art (Kyle Sommer著)

この図は、同調査で引用されている、アートの種類別の価格指数ですが、現代芸術(赤線)のパフォーマンスは過去25年で10倍以上と、印象派の作品(青線)の3倍弱に比べると高いリターンを生んでいるようです。

アートへの投資は、株式や債券といった他の投資とは、異なる値動きを示すため、純粋な投資対象としても、一部の投資家には受け入れられています。中には、アート・ファンドと呼ばれる、数十億円相当の芸術資産に分散投資するファンドも出始めています。

これらのファンドは現在、最低投資金額が数千万円と、気軽に一口、とはいかない規模となっています。ですが、海外では既に、森林投資のREITや、(生きた)牛に投資できるETFなどがあるように、将来的には、アートへの小口の投資も可能になるものと思われます。憧れのあの絵を、(ほんの)一部だけ保有する日も、意外と近いのかもしれませんね。

Photo by Monica Arellano-Ongpin

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